学術論文執筆のプロセス(Word・PowerPointの関係)
わたしは、学術論文を書くことが生業の1つである。つまり、研究者の端クレということである。もっといえば「社会科学の研究者」の一人である。
年に1本以上の査読付学術論文執筆が研究者としての必要最低条件だと思っているので、いつも、「Word」が一番の友だち状態である。
ただ、最近、論文を書くスタイルといったらいいのか、WordとPowerPointの関係性が変わってきたように思う。
私のような社会科学の研究者は、所属する学術団体=学会にもよるが、査読付学術論文の執筆と学会での研究報告がセットとなっている。そのため、ひとつのテーマに対して査読付学術論文の刊行までの流れは次のような流れが多い。
- 予稿あるいはエントリー用の報告概要(Word)を書く
- 研究報告会などで研究報告が認められると、本稿(Word)を書きながらスライド(PowerPoint)を作る。たいてい、報告時間は20分~30分なので、スライドは15枚~25枚程度となる
- 研究報告会で報告し、討論者やフロアからのコメントを受けて、予稿・本稿を修正したりして、査読を受けるための論文本稿を学会に提出する
- 査読を受けて、リジェクト(不採用)されない限り、修正要求に応じたり、修正要求に応じない/できない理由をまとめる
- 修正が認められると、学術雑誌掲載に向けた「校正」が始まる
- 校了すると、しばらくして掲載誌が刊行される
もちろん、学会によっては細かな差異はあるにせよ、だいたいの流れはこうである。海外の国際学会ではこの流れではない。よって、上記の流れは国内学会での流れである。
さて、研究のプロセス(=研究論文を執筆するプロセス)で、もっとも時間がかかり、アタマを悩ませるのが「1.」と「2.」である。ここが、報告できるかできないかの肝でもある。
これまで、わたしの最もスタンダードな流れは、〈Wordで予稿や本稿を書き終える⇒研究報告会用に予稿や本稿の内容を絞り込んだPowerPointのスライドを作る〉だった。
しかし、最近、これが
- Wordで予稿や本稿を書きながら、PowerPointのスライドを作る
- PowerPointのスライドで大枠を固めてから、Wordで予稿や本稿を書き進める
という2つの流れに変わりつつあることに気づいた。
そもそも、研究論文を書くには、何をテーマとするかが最も肝要であることはいうまでもない。これを誤ってしまえば、研究の流れが成立するはずもない。どこかで行き詰まり、破綻するのである。だから、どのような問題意識を持つか、どのような先行研究があって、何を明らかにするかというところが最も重要である。
そこをクリアして、予稿・本稿の執筆、PowerPointの作成に進んでいくのだが、PowerPointの作成を先行させると、論文の骨組みの組み立てがやや簡単にできるような気がしている。つまり、15枚~25枚のスライドで、何を伝えるかという筋書きをしっかりとスライドに落とし込むことができれば、予稿や本稿の執筆も容易に進むような気がしている。
もしかすると、「PowerPointのスライドで大枠を固めてから、Wordで予稿や本稿を書き進める」という研究プロセスが、時間的に最も効率的な研究プロセスなのかもしれない。
もちろん、異論や別のプロセスもあることは重々承知の上で、書き留めておくことにした。